ハマナス(浜茄子)は、学名:Rosa rugosa バラ科バラ属の落葉低木で東北アジアの温帯から冷帯(寒帯の海岸線の砂丘地に分布します。高温・多湿に弱く、耐寒性に優れている特徴を持ち、サハリンや千島列島のほか、日本では、北海道に多く自生しており、日本海側の南現地が鳥取県、太平洋側の南現地は茨城県とされ、茨城県と島根県の両南限自生地は、大正十一年に同時に「ハマナス自生南限地帯」として国の天然記念物に指定されています。
ハマナスの樹高は、1~1.5m程で、枝はよく分岐し、茎に鋭く・細かい刺があります。
花は、温帯地域では、4月~6月頃、寒帯地域では6月~8月頃に紅紫色の花を咲かせますが、白花種の自生もあります。
実は、花弁が落ち直径2~3㎝に結実し、1か月程度で緑から赤色になり食べられます。 味は、甘酸っぱく、別名ハマナシ(浜梨)といわれる由縁です。 果実は、ローズヒップと呼ばれ、食用としてジャムやママレート等に加工されます。
葉は、長さ9~11センチの奇数羽状複葉で互生します。 小葉は長さ2~4センチの楕円形で、先はまるく、 鈍い鋸歯があります。他のバラと異なり、葉脈に沿って網状に凹みがつき、裏面に凸出しており、しわしわになっています。学名の「rugosa」は、皺々(しわしわ)の意味で葉の特徴が学名になっています。
和名は、ハマナス(浜茄子)、別名ハマナシ(浜梨)、マイカイ(玫瑰)ともいわれますが、ハマナス(浜茄子)とハマナシ(浜梨)の呼名で辞書の表記も異なる等学説が2分している状況があります。
ハマナスは、18 世紀末にヨーロッパに運ばれ、耐寒性の強い特徴からハイブリッド・ルゴサ系バラの原種にもなっています。北米では、観賞用に舞栽培される他、ニューイングランド地方沿岸に帰化も確認されており、英名でRamanas rose、Rugosa roseですがJapanese roseとも呼ばれています。
茨城県鹿嶋市の大小志崎の自生地は、大正11年に「ハマナス自生南限地帯」として国の天然記念物に指定されました。
昭和の初期以前、茨城県の高萩市の赤松海岸や、東海村の豊岡海岸・村松海岸から現在のひたちなか市の国営ひたち海浜公園に至る地域、鹿島灘の大小志崎付近の海岸線は砂丘地で、ハマナスが群生していました。
しかしながら、その後、防災のための護岸工事や防砂林の整備、港湾の建設、駐車場を含む海水浴場の整備、宅地開発等の環境変化により、ハマナスの生息環境である砂丘地が減少しました。同時にハマナスの自生地が減少し、ハマナスは、2012年時点で茨城県の絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。ハマナスは、耐寒性がありますが、高温・多湿に弱いという特徴があり、昨今の温暖化の影響も危惧されてます。
茨城県が太平洋側のハマナスの南限地であることや、群生地や自生地があることはあまり知られていませんが、国営ひたち海浜公園や鹿島市の大野潮騒はまなす公園、鹿嶋市大小志崎の砂丘地でハマナスの群生をご覧いただけます。
記載は、茨城県の県北、県央、県南、鹿行の順です。
なお、以下に案内する茨城県内のハマナスの場所は、いずれも公共の管理地です。許可なく、枝を折ったり、実や花、植物本体を採取することは、犯罪(器物損壊や窃盗等)となりますので厳禁です。
赤浜海浜休養地【高萩市】
ハマナス自生地、4月~5月頃高萩駅東口ロータリー【高萩市】
ハマナス植栽地、4月~5月頃なぎさ公園【日立市】
ハマナス植栽地、4月~5月頃ひたち海浜公園【ひたちなか市】
ハマナス群生地、4~5月頃いばらきフラワーパーク【石岡市】
ふれあいの森、展望台下展望スペース、ハマナス植栽地利根親水公園【利根町】
ハマナス植栽地、白色種 4月~5月頃鹿嶋灘海浜公園【鉾田市】
大竹海岸、ハマナスロード、ピンク・白ハマナス自生南限地帯【鹿嶋市】
ハマナス自生・群生地、4月~5月頃大野潮騒はまなす公園【鹿嶋市】
ハマナス群生地、4月~5月頃はまなすの精【鹿嶋市】
平和と安全を願うシンボル像はさき生涯学習センター【神栖市】
ハマナスの果実
花は、既に終わっていますが写真は、2023年7月23日現在の茨城県利根町の利根親水公園のハマナスの実の写真です。
なお、実は食べられますが採取は厳禁です。
ハマナスは、「高萩市民の歌」や小学校の校歌にも歌われる花で、過去に赤浜海岸に多数群生していたことが容易に想像されます。
地元の植物の見識者の話では、明治時代に高萩市のハマナス自生地が国の天然記念物に指定されていたそうです。その後、鹿嶋市のハマナス自生地が南限地として指定され、高萩市のハマナス自生地は天然記念物指定を解除されたとのことです。そうした経緯があり、地元の有志のハマナス保護活動によって、赤浜海浜休養地と高萩駅東口ロータリーに植栽され、現在は高萩市が管理しているとのことです。
ハマナスが見られる赤浜海浜休養地は、高萩市赤浜の海岸の高台にあり、大建工業高萩工場とアステラス製薬の間の通路から行くことができます。 広い太平洋と海岸線を見渡せるロケーションの良さから、ロケ地としても利用されています。
赤浜海浜休養地の周辺には、お屋敷通り、琵琶墓古墳などがあります。
場所:〒318-0001茨城県高萩市赤浜(地図)
問合せ:高萩市観光商工課
電話:0293-23-7316
高萩駅東口のロータリーの花壇には、ハマナスが植栽されています。2023年は、天候の影響で2週間ほど早く、既に花はまばれで果実も見られました。高萩市の花は、市の名称にもなっている「萩」ですが、つつじやハマナスも候補にあったことが市のホームページに記載されています。
高萩駅の近くには、高戸小浜海岸、高萩海水浴場、大高寺などがあります。
※上記の写真は5月下旬に撮影したもので、花のピークを過ぎております。来年以降撮影予定です。
問合せ:高萩市観光商工課
電話:0293-23-7316
なぎさ公園は、日立港の中央に位置する広々とした公園です。緑豊かな園内では虫取りやピクニック、水遊びなども楽しめます。ハナマスは公園内の一角、屋根付きベンチの花壇に植えられています。国道245号線沿いに広い駐車場があり、大型トレーラーやバスも駐車可能です。なぎさ公園の近くには日立おさかなセンター、久慈浜海水浴場などがあります。
問合せ:日立港事業所
電話:0294-52-4000
国営ひたち海浜公園は、茨城県ひたちなか市にある国営公園です。園内には約120品種 、3,400株のバラが植栽されています。そのうち、1600株はハマナスです。4月から5月にかけて見頃を迎えます。近くの観光地としては阿字ヶ浦海岸・海水浴場、水戸つばさの塔、那珂湊おさかな市場などがあります。
場所:〒312-0012茨城県ひたちなか市馬渡 字大沼605-4
問合せ:国営ひたち海浜公園
電話:029-265-9001
いばらきフラワーパークのハマナスは、ふれあいの森展望台下の展望スペースに植栽されています。上の写真は花がほぼ咲き終わり、ハマナスの実が写っておりますが今年撮影予定です。
所在地:〒315-0153茨城県石岡市下青柳200番地
お問合せいばらきフラワーパーク
利根親水公園は、利根町中谷にある親水公園です。園内では、古代ハスやカキツバタ、ヒメスイレンなど四季折々の植物を見ることが出来ます。きらめき池の南側中央入口と北側中央口付近で、白花種のハマナスを見ることができます。開花時期は4月~5月頃です。入場料は年中無料で駐車場に10台ほど停められます。利根親水公園の近くには、利根町民俗資料館や円明寺、延喜式内社の蛟蝄神社、利根町指定文化財の山門の泉光寺などがあります。
場所:〒300-1615茨城県北相馬郡利根町中谷1628
問合せ:利根町役場
電話:0297-68-2211
鹿島灘海浜公園は、鉾田市大竹にある約27ヘクタールの県立の海浜公園です。
農産物直売所やレストラン、遊具のあるちびっこランド、太平洋を望む展望築山、太平洋を望む展望築山、海岸を歩けるボードウォーク、ピクニック広場などがあります。
鹿島灘海浜公園の駐車場から北側に150メートル程行くと、ちびっこランドや展望築山があり、その北側に海岸に繋がる舗装道路があります。この舗装道路は、通常、通行禁止になっています。その舗装道路の坂の途中から鉾田海水浴場の駐車場までの約500メートルの区間の歩道両側でハマナスをご覧いただけます。
上の写真は、2023年7月30日の取材でハマナスのある舗装道路の中央付近にある公園の案内板のあるところです。茨城県内の他のハマナスの場所や、舗装道路の南側のハマナスの花は既に終わっていますが、この場所にはピンクの花が咲いており、つぼみのものもありました。
茨城県鹿嶋市の大小志崎海岸のハマナス自生地は、太平洋側のハマナスの南現地として、大正十一年に「ハマナス自生南限地帯」として国の天然記念物に指定されました。同時に日本海側の南限地である鳥取県鳥取市の白兎海岸のハマナス自生地もハマナス自生南限地帯として国の天然記念物に指定されています。鹿嶋市の市の花は、ハマナスで関東の市町村で唯一です。市の話では、持ち去る人がいること、温暖化の影響により、咲が悪くなってきているとのことです。鹿嶋市には、海岸のハマナスの自生地の近くに、大野潮騒はまなす公園があり、公園内にはハマナス園があり、ハマナスの群生を見ることができます。
ハマナス自生南限地帯の近くには、カシマサッカースタジアム、明石海岸、はまなすの精などがあります。
場所:〒311-2201茨城県鹿嶋市大小志崎 北藪527-1
大野潮騒はまなす公園は、鹿嶋市角折にある公園です。園内では、約4000本のハマナスが植栽されており、4月~5月頃に見ることができます。公園の他にも、宇宙展望塔と呼ばれる施設があり、そこではデジタルプラネタリウムや郷土資料館、絵画や写真などを展示することができるギャラリーコーナーなど様々な体験をすることができます。公園や駐車場は年中無料ですが、展望塔施設は大人300円、小人(小中学生)200円、幼児(4歳~就学前)100円となっております。また、月曜(月曜休日の場合次の日)は展望塔施設が休館となりますので入ることができません。大野潮騒はまなす公園の近くには、鹿島神宮、カシマサッカースタジアム、明石海岸、はまなすの精などがあります。
場所:〒311-2212茨城県鹿嶋市角折2096−1
問合せ:はまなす公園事務所
電話:0299-69-4411
はまなすの精は、鹿島市にある角折海岸のヘッドランドに建つシンボル像です。 鹿島町・大野村の合併により「鹿嶋市」の誕生を記念して平成7年9月1日に建立したもので、平和と安全を願うシンボル像です。また、はまなすの精がある角折海岸は釣り人やサーファーが四季を通して訪れる場所でもあります。車は海の目の前に停めることができます。はまなすの精の近くには鹿島神宮、荒井海岸、明石海岸、カシマサッカースタジアムなどがあります。
場所:〒311-2212茨城県鹿嶋市角折2351−1
問合せ:鹿嶋市 経済振興部 商工観光課
電話:0299-82-2911
はさき生涯学習センターは、茨城県神栖市にある公共施設です。多目的ホールや展示ホール、図書室などがあり、子供から大人まで幅広く利用できます。はさき生涯センターのハマナスは、市の職員の方がハマナス保護を行っており、5~6年かけて種から育て、2年前頃に生涯学習センターの花壇に植えたそうです。画像はハマナスの果実の様子です。はさき生涯学習センターの近くには、波崎海水浴場などがあります。
上の写真をクリックすると、地上2件のVRツアーをご覧いただけます。
場所:〒314-0408茨城県神栖市波崎9591(地図)
問合せ:はさき生涯学習センター
電話:0479-44-0001
本ハマナスページは、2023年に取材・発信したもので、気候の関係で例年より2週間ほど開花が早く、開花時期を逸した場所が多くあります。
茨城県のハマナスVRツアーは、パソコン・スマートフォンでご覧いただけます。VRゴーグルを利用すると3D体験ができます。